2型DMと診断されている”隠れMODY”のこと

2週間にMODY疑い例に2例出会ったことから想起されること

1型でも2型でもなく、その他の遺伝性糖尿病に分類されるMODY(常染色体優性遺伝)。知名度が低くてカミングアウトしずらい、2型と誤解されるのが嫌で伝え方が分からず悩んでいる、中にはやむを得ず対社会的には1型DMとして生きているという人もいるかも知れません。

「自分と同じ病型の人に会ったことがない」というMODY当事者の投稿を見たことがある。DM全体の1〜3%程度とされているMODYですが、実は確かな調査報告はなく、頻度は不明です。

僕はこの2週間にMODYが疑われる患者さんに2人出会いました。比較的稀とされているMODYですが、正しく診断されず、2型DMとされている人はかなりの数に上るのではないかと思います。

1例目:若年女性。検診でA1c8.3。10年前から耐糖能異常、昨年A1c7.6。ライフスタイルに問題なく、家族歴で妹さんがすでにインスリン療法、父親、父方祖母、母方祖母もDM。空腹時血糖値136, CPR 0.66。

2例目:70代の男性。発症後55年経っていて、20年前からインスリンを開始されている。家族歴を伺ったところ、祖父母、両親、自分を含む4人の兄妹すべて、そしてご自身の長男も糖尿病であると判明、しかも全員インスリン療法中とのこと。

MODYは家系図をつくり、発症年齢を詳細に確認しなければ確定的なことは言えないわけですが、2型DMと誤診されている”隠れMODY”が存在するのかも知れません。やはり初診時の家族歴を丹念に聴き取ることが大切ではないかと思います。

MODYの当事者がカミングアウトできないという悲劇は生活習慣病という呼称が市民権を得ている社会が生む悲劇の1例に過ぎません。この呼称は遺伝素因に環境要因が加わって発症するDMという病気の多様性を否定し、あたかもすべては個人の生活習慣に起因するかのような誤解を社会に蔓延させました。その結果、個人の病態の複雑さ、主観的な意味(illness)が理解されにくい社会が生まれています。

生活習慣病という呼称が生む社会的な被害を解消しなければならないとあらためて思う今日この頃です。

by
関連記事