肥満関連スティグマ」について

肥満=食べ過ぎというステレオタイプを駆逐しよう!

■カロリー摂取量と肥満の関係


太っている人を見ると食べ過ぎと決めつけるステレオタイプは多くの人を苦しめています。最近、2007年にJDCSが40〜70才の2200名の2型糖尿病患者さんを対象に、カロリー摂取量と体重について調査し、両者に相関性がないことを発表していることを知りました。しかし、その後14年経った今もなお、過度にカロリー制限にこだわる医療者が多いのは不思議です。肥満=過食というステレオタイプを社会から払拭するために、こうした情報発信が大切だと思いますのでご紹介します。



■BMI四分位数分析


BMIを四分位別に層別化して調べています。最高位と最低位ではBMIは1.4倍異なりますが、エネルギー摂取量には差がないばかりか、A1c、脂質プロファイルにも差がないと報告されています(スライド)。


■カロリー摂取量四分位数分析


カロリー摂取量別に四分位に層別化。最高と最低ではカロリーは1.8倍(約1000kcal)異なりますが、BMIには有意差がなかったと報告されています(スライド)。このようにたくさん食べているから太っているとは言えない訳です。それどころか、健常者を対象にした海外論文ではカロリーとBMIが逆相関しているという報告すら報告されています。


■肥満とカロリーの複雑な関係


肥満=過食というステレオタイプを医療から撲滅したいものです。個人的な意見ですが、肥満には少ししか食べていないのに体重が減らない人と食欲制御が難しいため肥満している人がいると思っています。だから私は前者にはSGLT2阻害薬を、後者にはGLP-1受容体作動薬を選択しています(スライド)


■まとめ


このように日本人を対象とした調査において、カロリー摂取量とBMIの相関性の低さが裏付けられています。したがって、食事療法はカロリー計算や栄養素の管理に過度に囚われるのではなく、自分の嗜好に合っていて、長続きする方法を求めて、医師と患者さんが協働的に取り組んでいくことが大切だと思います。指示カロリーを決める計算式を用いているのは日本だけで、欧米では患者さんに指示カロリーを求めず、目標体重を決めて取り組んでいるのはこのような背景があるからではないかと思います。


参考文献
Cross-sectional association between BMI, glycemic control and energy intake in Japanese type2 diabetes.
Analysis from the Japan Diabetes Complication Study
Diabetes Research and Clinical Practice 77S (2007) S23–S29

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